かき菜(かきな)は、アブラナ科アブラナ属の野菜です。
別名を芯切菜(しんきりな)、本稿でも紹介している宮内菜、
東京近郊では、「のらぼう」と呼ばれています。
かき菜は、群馬県、栃木県のうち、特に両毛地区で、
古くから品種改良(群馬県農業試験場等)を経ながら、
現在もなお、さかんに栽培されている伝統野菜です。
かき菜は、「なばな」の在来種とされ、
伸びてくる花茎を欠き取って収穫するのですが、
「佐野の茎立」として、万葉集にもその記述があります。
古来より、両毛地区のほとんどの農家や家庭菜園で
栽培されているほど、無くてはならない人気野菜です。
しかし、限られた地域で普及した野菜のためか、
全国的に知られた野菜ではないかも知れません。
また、ローカルな地質などの生育条件によるものなのかは
わかりません。
しかし、この地方で、かき菜が出回り始めると、
ほうれん草の消費が落ちるほど、人気のある野菜なのです。
そんな「かき菜」の栽培方法を本記事で御覧いただくと、
あなたの地域でも栽培できるかも知れません。
さらに、早春に収穫できることから、
完全な無農薬で栽培可能な野菜です。
ぜひ、あなたも栽培してみては、いかがでしょうか。
子どもたちといっしょに、38年間、自然観察や
農園芸などの環境教育活動に携わってきました。
本稿では農家の知識と技術を家庭菜園向きに応用し
基本的な「野菜の育て方」について解説いたします。
【クイズ】 伝統野菜「かき菜」が登場する書物は、次のうちどれでしょう?
● 日本書紀
● 魏志倭人伝
● 古今和歌集
● 万葉集
* 正解は、最後のページを御覧ください。

この記事の目次
【かき菜の育て方:秋に種をまくかき菜】

「かき菜」は、北関東「両毛地方」で
育てられた野菜です。
「かき菜」の品種は、複数あります。
以下に示す「宮内菜」よりも、
早く収穫できます。
筆者の住む地方では、
「かき菜」は欠かせない野菜です。
そのため、筆者は、早生種と晩成種というように、
2種類の品種を組み合わせて栽培し、
長く収穫できるように工夫しています。
[品種名] :かき菜
栄養と風味ある「とう菜」
トーホクのタネ 品種番号 05080
[科・属名]:アブラナ科 アブラナ属
[原産地] :両毛地域 伝統野菜
[生産地] :アメリカ
特 性
両毛地方で育てられた「とう」を食べる「かき菜」です。
翌春の3~4月に収穫し、やわらかく風味があります。
早春の両毛地方に、なくてはならない野菜です。
まき時:暖かい地域 | 8月下旬~ 11月上旬 |
---|---|
:寒い地域 | 8中旬~ 11月上旬 |
収穫の目安 | 翌春3~4月 |
収穫部位 | とう |
数量 | 10ml |
発芽率 | 90%以上 |
発芽適温(地温) | 20~25℃ |
生育適温 | 10~20℃ |
【かき菜の仲間:宮内菜】

「宮内菜」は、北関東「両毛地方」で
育てられた野菜です。
「かき菜」の種類に属します。
[品種名] :あぶら菜「宮内菜」
香り・再生力抜群 収量の多い「かき菜」
カネコ種苗株式会社
[科・属名]:アブラナ科 アブラナ属
[原産地] :両毛地域 伝統野菜
[生産地] :イタリア
特 性
葉色は淡緑色で、浅い切れ込みがあり、
内側にわん曲して葉柄は長いです。
葉は、やや厚く柔らかいです。
食味は甘みに富み、だれもが好む香りもあります。
再生力が非常に旺盛で、第1側枝で30本、
第2側枝で65本前後となり、
他の芯摘油菜に比べ、約3週間程度、
収穫期に幅があります。
特に、晩生多収品種です。
まき時:暖かい地域 | 9月上旬~ 10月下旬 |
---|---|
:寒い地域 | 8中旬~ 9月中旬 |
収穫の目安 翌春 |
中・暖地:3~5月 冷涼地:4~6月 |
収穫部位 | とう |
数量 | 10ml |
発芽率 | 85%以上 |
発芽適温(地温) | 15~20℃ |
生育適温 | 15~20℃ |

[品種名] :宮内菜(芯摘菜)
✩再生力旺盛な「かき菜」晩生多収品種!
池田種苗株式会社
[生産地] :イタリア
特 性
上記「宮内菜」と同じ。
まき時:中間地・暖地 | 9月上旬~ 10月下旬 |
---|---|
:冷涼地 | 8中旬~ 9月中旬 |
収穫の目安 翌春 |
中・暖地:3~5月 冷涼地:4~6月 |
数量 | 10ml |
発芽率 | 85%以上 |
【かき菜の育て方:栽培場所の選定】
日当たり、排水、通風のよい環境を好みます。
種まきは、ポット栽培と、直まき栽培があります。
本稿では、直まき栽培を御紹介します。
【かき菜の育て方:栽培場所の準備】
種まき2週間前
苦土石灰:100~150g(約2~3振り)
種まき1週間前
堆肥:3kg 化成肥料:100g(約2振り)
* 全面に散布し、よく耕します。
【かき菜の育て方:種まき】

約1mのウネをつくります。
たこ糸を張って、クワなどを使い柵をきります。

約25cm間隔で、種のまき溝をつくります。
目印のたこ糸に沿って板を滑らせ、約1cmの
深さの溝をつくりましょう。
種のまき溝の底面が平らで、種の上にかけた土の表面も
平らにすると、発芽をそろえることができます。


今年は、高温の日々が続き、目安としていた
25℃(最高気温)以下には、なかなかなりませんでした。
また、台風の影響もあり、昨年(9月12日)よりも、
10日ほど遅い種まきになりました。

かき菜と宮内菜(かき菜の一種)の種をまきました。
ウネ幅によって、板の幅を選びます。
今回は、ウネに直まきして、移植する方法を御紹介します。

種をまいて、種が見えなくなる程度に土をかけます。
次に、かけた土の上を板でかるく押せましょう。
● 土の表面の乾燥が、ある程度緩和される。
● まいた種と土を密着させる。
● 発芽が均等にそろう。
発芽した「かき菜」(9月23日)
【かき菜の育て方:中耕・追肥・土寄せ】

晴れたり、雨が降ったりと、天気の移り変わりによって、
土の表面が、次第にかたくなってきます。

かたくなった条間の土をスコップでほぐします。
特に、化成肥料のみが施され、有機質の乏しい土壌は、
土の表面がかたくなりがちです。
土の表面がかたくなると、
降った雨が流れ去り、土中に供給されません。
また、根に充分な空気も行き届かず、
結果として吸肥作用に影響を及ぼします。
もちろん、根の周りのバクテリアや、
微生物への関係にも関係してきます。
(詳細は、追々お話させていただきます)
中耕作業を済ませたら、
有機化成肥料を与え、土とよく混ぜます。

1回目の中耕の後、条間の表面に堆肥をまきました。
1周間ほど経過しましたが、堆肥を施した条間は、
さほどかたくなっていません。
2回目の中耕も、条間の土をほぐしながら、
発芽した小さな苗を両側から挟むようにして土寄せします。
土寄せする前に、少量の化成肥料をまいて、
寄せる土に混ぜると肥効性がいっそう高まります。

速効性肥料と緩効性肥料、無機肥料と有機肥料、
土壌改良材と肥料との区別、などを念頭において、
使い分けましょう。
詳細は、渡良瀬橋ブログ「資料集」自然いっぱいコーナー!
1【農園芸資料】⑹<土壌改良材と肥料>
を御覧ください。

追肥と土寄せの効果で、だんだんと苗の生長が
促進されてきました。
まばらなところもありますが、十分に苗が生長したころ
他の場所に移植しますので、心配ありません。
今年(2022)は種まき時期が遅かったせいか、
昨年に比べて小さいです。
この段階の苗は、適宜に土寄せを行い、苗の倒状を
避けるとともに、苗への肥効性を高めることが
大切なポイントとなります。


(注:西暦がない月日のみの画像は、昨年度です)

ずいぶん窮屈になってきましたね。
後日、成長の良い苗を別の場所へ移植します。

10月下旬ころ、大きな苗を別の場所に移植する予定です。
小さな苗は、お浸しにして食べましょうね。

植え替えの時期を迎えています。

【かき菜の育て方:苗の移植】

右側一列が「かき菜」で、左側の列は「宮内菜」です。
植え替えは、霜が降りる前に済ませておきましょう。
1 ウネ幅60~70cm、
株間20~40cmの間隔で定植します。
2 定植位置をクワで植え溝を掘って、水を満たします。
3 かき菜の苗は、根回りに比べて背が高いため、
寝かせて定植します。
4 根もとに土を寄せます。
* 植え溝の代わりに、「球根植え器」で穴を開け、
水を満たし、寝かせて植えてもいいでしょう。
(植え穴に、液体肥料や活力液の希釈水を注ぐ場合、
無駄がありません)

幅70cmのウネを立てました。

ウネの中央に、20cm間隔で植え穴を掘ります。
植え穴は、球根植え器を使うと便利です。

苗の活着(根張り)を促すために、活力液(HB-101など)と
液体肥料を希釈(1,000倍)した水を植え穴に注ぎます。


小さめの苗は根を取り除いて、お浸しなどにすると
美味しくいただけます。
記事内の西暦を付していない月日のみの画像は、
昨年度(2021年)のものです。
今年度の生育のようすと比較しながら、御覧ください。

定植後、葉を起し始めた苗(11月5日)定植後、数日すると、葉が立ってきます。
今後、寒い冬を迎えますが、新芽がたくましく越冬し、
来春、暖かくなるにつれ、大きく育ってきます。
初期生育は「宮内菜」に比べ、「かき菜」のほうがはやく、
それだけ、来春の収穫も「宮内菜」よりも、はやくなります。
「かき菜」は、品種にもよりますが、中心のトウ立ち芽が
太くて充実しています。
しかし、中心のトウ立ち芽を収穫した後は、
「宮内菜」のほうが、脇芽の太さと収穫本数が勝っています。
2種類の「かき菜」(宮内菜も〝かき菜〟です)を
育てることで、収穫期間をできるだけ長く保ち、
おいしい「かき菜」を長く楽しむ工夫をしています。
それほど、ここ両毛地区では、「かき菜」を
好んで栽培しています。

しっかり根付いて、葉をもち上げた「かき菜」です。
初霜が降りる前に、根張りをさせておくことが、
ポイントになります。
【かき菜の育て方:土寄せ・追肥 ①】

ウネの肩の部分に化成肥料を少量追肥します。
(NPK=888 約40g/㎡)
追肥後に、クワなどでウネ間の土を株元へ寄せます。
追肥と土寄せを行うことで、株を丈夫に育て冬に備えます。
かき菜は、外側の大きな葉が枯れてしまっても、
中心の芽がしっかり残っていれば心配ありません。

いちばん大きく育っているのは、移植をしないで
小さい苗を間引いたウネの「かき菜」です。
そして、大きさを揃えて移植したウネによって、
苗の大きさが異なっていますね。
結果的にトウ立ちする時期が、少しずつズレてきますから、
長く収穫することができることになります。
そうです、かき菜は「トウをかき採る菜」でしたね。

12月20日の朝、畑に霜柱が立っていました。
それでも、元気に育っています。

冬季の作業は、ほとんどありません。
必要に応じて、株元に土寄せをしてやる程度で十分です。
【かき菜の育て方:土寄せ・追肥 ②】

秋に植え替えた時の外葉は、すでに枯れています。
しかし、中心の芽は、気温の上昇とともに、
元気よく育ってきます。
3月上旬に、かき菜の株元へ土寄せ兼ねて、
配合肥料を施し、肥効性を高めます。
筆者は、米ぬかに水を加えて腐熟させた液肥を
希釈して、株元に施しています。
● ゴミバケツの3分の1ほど米ぬかを入れ、バケツいっぱいに水を入 れます。
● ひしゃくなどを使って、よくかき混ぜます。
● ふたをして、腐熟させます。
* 米ぬか液肥は、冬季に作らないと、
腐熟せず、いわゆる腐敗してしまい、
強烈な悪臭を伴いますので、御注意くださいね。
【かき菜の育て方:摘芯】

かき菜の中心の茎を摘芯します。
かき菜は、摘芯することで、脇芽の伸長を促します。
摘芯した中央の茎は、特に柔らかく、
たいへん美味しくいただけます。

かき菜は、中心部の茎を伸ばしすぎると、
後に出てくる脇芽が細くて短くなり、
太くて充実した花茎が収穫できません。
中央部の茎を摘芯すると、脇芽が伸長しはじめます。
今後は、この脇芽(とう)を欠き取って収穫していきます。


かき菜は4月になると、脇芽が細くなってきます。
今まで、たくさん収穫してきましたので、
これからは、菜の花を楽しみましょうね。
正解:万葉集
* 万葉集の東歌に歌われた「茎立」(かき菜)。
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
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